このブログでは『特別支援教育』に関する情報をわかりやすく解説します。10年以上の教員経験を踏まえて、実践に役立つことを心がけています。
全国で特別支援学校の教室が足りていないって聞いたけど、解決策はあるの?
今回は支援学校の教室が足りていない理由と解決策について一緒に勉強していこう!
こんな方に読んでほしい
●教室不足についての理解を深めたい人
●教室が足りなくて困っている人
今回の記事を見ることで、特別支援学校の教室不足の実態と今後の方向性について理解できます。
今回のニュースも絶対にわかるようになるからね!
「動画でニュースを見たい」という人は下の動画を見てください!!
「特別支援学校の教室不足」の概要
全国の特別支援学校で「足りていない教室」が3359教室もあるよ!
という調査結果が2024年の3月26日に出たんよ。
文部科学省のホームページで、「効率特別支援学校における教室不足調査の結果について(令和5年10月1日現在)」が公表されました。https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01359.html
全国の特別支援学校で3359の教室が足りていない状況です。
東京は558教室が不足。秋田と栃木は足りている。
それぞれの都道府県によっても差がありそう…。
場所によって違いはあるの?
やっぱり、子どもの数も多い都市圏で多くの教室が足りていないね。
ただ、都道府県によっても意外と差がある。
教室の数が一番不足している東京都では558教室が足りない状況です。
一方、秋田県と栃木県は教室不足が0。つまり、教室は足りている状況です。
ただし、都道府県によって差も大きくなっています。(下の表を参照)
公立特別支援学校における教室不足調査の結果について
https://www.mext.go.jp/content/20240329-mxt_sisetujo-000034597_1.pdf
(2024年4月4日閲覧)
2年ぶりの調査で、教室不足は少し改善された。
10年前の調査(平成25年)より、教室不足は改善されている。(4271➡3359の教室不足)
公立特別支援学校における教室不足調査の結果について
https://www.mext.go.jp/content/20240329-mxt_sisetujo-000034597_1.pdf
(2024年4月4日閲覧)
でも、なかなか思うように改善していない印象やねぇ。
なんでやろ?
教室が足りていない理由
なんで教室が足りていないの?
特別支援学校に通う子どもの数が増えてるからよ。
子どもの数が増えたら、クラスも増えるやろ?
下の表を見てくれるか?
「少子化」って言われて子どもの数は減っているのに、特別支援学校に通う子どもの数は右肩上がりに増えてるんやなぁ。
特別支援学校に通う子どもの数が増えているから、必要な教室・特別教室が足りなくなっているような状況です。
解決策(熊本県の取り組み)
教室不足を解決するうえで難しい点は、「ハコ(校舎)はすぐには変えられない」ということです。
例えば、「教室が足りないから3つ増やすか?」と言ってすぐにできるものではありません。数年間を見越した計画が必要です。
じゃあどうすればいいの?
大まか方向性としては大きく2つあるんよ。
1.今ある教室でどうにかやりくりする。
2.特別支援学校を新設・移転する。
なるほど!
でも、もうちょっと詳しく説明してくれん?
今ある教室でどうにかやりくりする。
校舎を変えようと思うと時間がかかる。
だから、今ある教室でどうにかやりくりするっていう方法やね。
具体的には2つあります。
①特別教室を転用すること。
学校にはいろんな教室があります。それらを普通の教室に転用して使う方法があります。例えば、視聴覚室や美術室をクラスの教室として使います。
②他の学級と同じ部屋を使う。
例えば、1ー1と1-2が学級活動をするときには同じ部屋を使うといった方法があります。
※これらは一時的には効果があるかもしれません。しかし、子どもの人数が増えてきている今の状況ではその場しのぎにしかなりません。
特別支援学校を新設・移転する。
上の方法がその場しのぎにしかならないんだったら、どうしよう?
今回は、熊本県の取り組みを参考にして、他にどんな方法があるか考えてみよう。
熊本県は、前回の調査(令和3年度)では、181の教室不足がありました。今回の調査(令和5年度)では、91の教室不足に改善されています。教室不足を50パーセント改善した熊本県の取り組みを見ると、教室不足に対する今後の方向性が見えてきます。
新しい特別支援学校を開設する。
1つめの方法は、新しい特別支援学校をつくるっていうことやね。
熊本県は2019年~2021年に新たに4校の特別支援学校を開設しました(そのうちの1校は熊本市立)。
「なければつくればいい!」ってことやね。
シンプルな考え方やね。でも、お金も時間もとてもかかるよね…。
今の特別支援学校を増築する。
2つめの方法は、今の特別支援学校を増築するってことやね。
熊本県は、特別支援学校の移転や建物の老朽化に伴う改修や建て替えなどと併せて、今ある特別支援学校の内部改修や増改築を進めました。
なるほど!
でも、新設するほどではないにしても、これも時間とお金がけっこうかかるよね…。
今ある県の施設を改修して使う。
三つ目の方法は、今ある県の施設を使って、特別支援学校を移転させるっていうことやね。
「今ある県の施設」として注目されるのは、人数が少なくなった高校や閉校する学校です。学校の施設をそのまま使うことができると、改修の費用も時間も少なく抑えることができます。
熊本県でも、
●一般の高校の空きスペースに特別支援学校高等部を移転する。
●閉校する高校に特別支援学校の小学部~高等部(小学生から高校生)までを移転する。
といったことが行われました。
この方法の良いところは、
●お金をあまりかけずに実行できること
●人数が少なくなった高校の空きスペースを活用できること
だね。だから、けっこう現実的な取り組みだし、今後もこんな方向で進んでいく可能性が高そうだね。
だから、特別支援学校以外の先生にも関係があるんやね。
◇「勤務校に2年後、特別支援学校が移転してくる」ということが現実的に起きる可能性があります。
➡(どうしたら円滑に移転ができるのか)を考える必要があります。
参考(国からの補助【お金】について)
すぐに解決っていうのはなかなか難しいんやねぇ。
そうなんよ。
最後に参考として、学校施設の増改築には国からの補助(お金)が出るよー
ということをまとめて終わりたいなと思うわ。
国からの補助の割合【一覧】
●新築・増築➡2分の1の補助金
●危険な建物の立て直し(耐震が不十分など)➡3分の1の補助金
●内外装の模様替えや用途変更(バリアフリー化、トイレ改造など)➡3分の1の補助金
●今ある施設を特別支援学校用に改修する➡3分の1の補助金
さらに、令和6年度までに実施する場合は、これよりも多くの補助が出ます。
※令和2年度~令和6年度が、特別支援学校の教室不足への集中取り組み期間として国の補助金も厚くしている。
まとめ
今回は、【先生が知っておくべき障害ニュース】ということで、特別支援学校の教室不足についてまとめました。
特別支援学校では教室が足りていないので、各都道府県はどうにかして解決しようとしている。
解決の方向性としては、今の校舎でどうにかやりくりする以外に、新設や増改築、移転するといった方法が考えられる。特に、一般の高校の空きスペースを活用して特別支援学校を移転させるといったことも実際に行われている。
今回のニュースを理解することで、自分が働いている都道府県で「特別支援学校の移転」の話が出てきても、驚かずに冷静に対処できるようになると思います。
障害に関するニュースへの感度を高くして、これからも学んでいくことが大事やで。
そして、時代に流されるんじゃなくて、流れを理解して自分にできることを主体的にしていけたらいいよね。
参考資料・URL
①文部科学省HP「効率特別支援学校における教室不足調査の結果について(令和5年10月1日現在)」、https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01359.html (2024年4月4日閲覧)
②公立特別支援学校における教室不足調査の結果について
https://www.mext.go.jp/content/20240329-mxt_sisetujo-000034597_1.pdf (2024年4月4日閲覧)
③熊本県教育委員会「県立特別支援学校整備計画【改訂版】~知的障がい特別支援学校における教室不足対策~(平成31年(2019年)3月26日)」、https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/112574.pdf (2024年4月4日閲覧)
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