このブログでは『特別支援教育』に関する情報をわかりやすく解説します。10年以上の教員経験を踏まえて、実践に役立つことを心がけています。

障害者雇用代行ビジネスってなに?批判されてるみたいなんやけど…

今回は、障害者雇用代行ビジネスの概要と批判されている理由について勉強しよか。
こんな方に読んでほしい
●代行ビジネスの内容を知りたい
●批判されている理由を知りたい
●就職先として気になっている
今回の記事で、障害者雇用代行ビジネスについて自分の頭で考えられるようになります。

一緒に勉強しよう!
▼動画もぜひ見てください!
▼勉強ノート(内容を1枚にまとめたで)

障害者雇用代行ビジネスとは?


これだけ見てもわからん…。
障害者雇用代行ビジネスって何?

まずは登場人物を確認して、それぞれの関係性を見ていこか。
▼登場人物は次の3者です▼



障害者雇用代行ビジネス事業所は「貸」農園を管理・運営

この事業所は、貸農園を管理・運営している。
➡この農園で障害者が野菜を栽培・収穫する。
「農園で障害者が働く」だけなら、他の福祉事業所にもよくある。

障害者雇用代行ビジネスでは、
貸農園っていうのがミソやねんな。

貸農園?
どういうこと?

貸農園やから誰かに貸すわけやろ?
それを貸す相手が障害者を雇用したい企業(A・B・C社)やねん。
代行ビジネス事業所と企業(A・B・C社)の関係

代行ビジネス事業所は
別の企業(A・B・C社)に
農園で働く障害者を紹介する。

企業(A・B・C社)は
代行ビジネス事業所に
紹介料・農園利用料を支払う。
代行ビジネスを理解するポイント
◎代行ビジネス事業所は貸農園を運営
◎障害者はこの貸農園で働いている
◎企業が障害者を雇用(雇用契約を結ぶ)
➡企業の社員(障害者)が貸農園で働いているというかたち
◎企業は代行ビジネス事業所にお金(障害者紹介料・農園利用料)を支払う

このポイントを踏まえて、下の画像を見るとイメージできるんちゃうかな。


障害者を雇用したい企業(A・B・C社)はお金を払うだけで、代行ビジネス事業所が雇うところから働くまでを面倒みてくれるんよね。
障害者を雇用する理由【法定雇用率】

でも、企業(A・B・C社)は、お金を払ってるだけよね?
なんで企業は代行ビジネス事業所にお金を払ってまで障害者を雇おうとしてるん?

雇いたかったら自分の会社で雇えばいいのに不思議やろ?
ここには、法定雇用率っていうのが関係してくるねん。
増加し続ける法定雇用率
法定雇用率とは…
企業は一定割合以上の障害者を雇わなければならないと法律で決まっている。
◇1987年:全従業員に対して障害者を1.5%雇わなければいけない。
➡2022年:2.3%雇わなければいけない。
➡2026年度までに、2.7%まで段階的に引き上げていく。
法定雇用率を達成しないとどうなる?

法定雇用率を達成しないとどうなるん?
法定雇用率を達成しないと…
①障害者の不足1人につき、月額5万円支払う
➡反対に、障害者の超過1人につき、月額2万7千円もらえる
②行政指導の対象となる
➡改善しなければ企業名が公表される
△官公庁の入札で不利になる
△企業のイメージダウンにつながる

だから、企業(A・B・C社)は、お金を払ってでも法定雇用率を達成したいんよね
障害者雇用代行ビジネスが増えている理由(それぞれのメリット)

なんで障害者雇用代行ビジネスが増えてるん?

それは、企業・代行ビジネス事業所・障害者にとってメリットがあるからやで。
企業(A・B・C社)のメリット

企業にとってはお金を払ったとしてもメリットがあるってことやね。
企業のメリット
①法定雇用率を達成できる
②障害者に見合った仕事を準備しなくてよい
③他の社員や障害者本人への配慮がいらない
④おいしい野菜がもらえる

もうちょっと詳しく説明するで。
①法定雇用率を達成できる
・給付金(障害者の不足1人につき、月額5万円)を払わなくてよい
・イメージアップにつながる。
➡会社のダイバーシティ(多様性)をアピール
②障害者に見合った仕事を準備しなくてよい
自分の会社で雇うと、特別な仕事をわざわざ準備する必要がある。

雇った障害者のためにどんな仕事を準備すればいいのか、企業が相談できるところはあるの?

国・自治体・特別支援学校などいろいろあるで。でも、企業にはかなりの負担よね。
③他の社員や障害者本人への配慮がいらない
・一緒に働くとトラブルが起こりやすい
➡他の社員からの不満や悩み
(サボりか障害かわからない。どこまで配慮すればいいの?)
・障害者本人への配慮にも気をつかう
➡職場の人たちに障害をどこまで伝えるのか?
④おいしい野菜がもらえる
例えば、農園の新鮮な野菜を社員食堂で使うことができる

最近は野菜の値段も高いから、新鮮でおいしい野菜がもらえると嬉しいよね。
代行ビジネス事業所のメリット

実際に障害者が働いてる貸農園の事業所やね。
代行ビジネス事業所のメリット
①作物の出来は問われない
②給料の心配をしなくていい

もうちょっと詳しく説明するで。
①作物の出来は問われない
市場に出さなければ、規格(大きさ・重さ・長さ)は関係ない

規格外の野菜ってけっこうあるからね。
②給料の心配をしなくていい
企業がお金(給料+紹介料+農園利用料)を払ってくれる
➡能力を問わず、どんな障害者でも雇うことができる

誰を採用しても良いってこと?

極端な話、「出勤さえしてくれればOK!」みたいなこと。
野菜を育てる力が問われるわけではないからね。
障害者のメリット

実際に貸農園で働いてる障害者のメリットやね。
障害者のメリット
①安定した給料がもらえる
②自分のペースで仕事ができる

もうちょっと詳しく説明するで。
①安定した給料がもらえる
障害者の給与と比べると高い給料が安定してもらえる
➡月に11~13万円程度
障害者の平均給与
◇A型事業所(雇用契約あり)
月給平均 83,551円(令和4年度)
◇B型事業所(雇用契約なし)
月給平均 17,031円(令和4年度)
②自分のペースで仕事ができる
成果を気にせず、ストレスの少ない中で働くことができる
なぜ批判されているのか?(メリットはたくさんあるのに…)

みんなにメリットがあるから、批判する理由がわからんくなってきたわ…

じゃあ、ここでは障害者雇用代行ビジネスが批判されている理由について深掘りしてみよか。
日本・世界が目指す未来と違う

批判されてる大きな理由は、日本や世界の国が目指している未来と違うからなんよね。
◇日本や世界が目指す未来は、共生社会とインクルーシブがキーワード
共生社会とは…
◇障害の有無、男女、年齢などにかかわらず、お互いを大切に思える社会
◇さまざまな人が分け隔てなく暮らしていくことのできる社会
インクルーシブは、”みんな一緒”
例えば、インクルーシブ教育は「障害の有無にかかわらず、みんな同じ教室で学ぶ」ことを目指した教育。
◇国際人権条約の『障害者権利条約』では、「障害を理由とするあらゆる区別は差別」だとしている。

障害者も健常者も区別せず、みんな一緒(インクルーシブ)に働こうを目指してるねん
日本の障害者施策に対する国連からの批判

日本のこれまでの障害者に関する政策は、国連から批判されてるんよね。

え?なんで?

日本では、歴史的に、障害のある人とない人を分ける分離教育が進められてきたからやねん。
◇日本の障害者施策の経緯(文科省HP「日本の障害者施策の経緯」より)
●戦前:家族が障害者を保護する(➡社会や国は障害者の面倒を見ない)
●戦後:障害児には特別な教育の機会(特殊教育)が与えられる。
➡特殊教育が養護学校、そして現在の特別支援学校へとつながっていく。

特別な教育をするために、日本では障害者と健常者が分けて教育されてきたんよ(分離教育)。
この分離教育が国連からずっと批判されてるんよな。

だから、障害者が違う場所で働いてることが「なんか違うくない?」ってなってるんか。
「分離」につながるから障害者雇用代行ビジネスは批判されている

そろそろ批判されてる理由をまとめてちょんまげ。

日本や世界が目指す未来【共生社会・インクルーシブ】と違うからやで。だって、会社が雇用してるにも関わらず、働く場を完全に分けてしまっているもんね。

みんな一緒に働いてほしいのに、このビジネスでは障害者と健常者が別々に働いてるんやね。
「ビジネス」という言葉は批判的

補足やけど、そもそも「障害者ビジネス」とかいうときの「ビジネス」っていう言葉は批判的な意味合いが含まれてるねん。

「障害者雇用代行ビジネス」っていう呼び方自体が「悪いことしてる」っていう印象を持たせやすくさせてるってこと?

だから関わる人は言葉に惑わされずに、中立の立場で物事を捉えるのが大事やね。

今回の登場人物で「○○が悪い!」と決めつけず、冷静に話し合えればいいね。
障害者の雇用に関する多くの課題

障害者雇用代行ビジネスは、障害者の雇用に関する問題を浮き彫りにしてるんよ。
障害者の雇用に関する課題
①受け入れる側の課題
②障害者の低い給料という課題
③共生社会・インクルーシブ(みんないっしょ)に向けた課題
①受け入れる側の課題

これは障害者を受け入れる企業とか福祉事業所の課題やね。
◇企業の課題
法定雇用率が上がり、障害者を雇わなければならない。
➡かなりの負担感(仕事の切り出し、配慮)をどうするのか?
◇障害者を雇う福祉事業所の課題
利益をあげるためにどうすればいいのか?

昔の福祉事業所は補助金だけでほそぼそとやっていけたんやけどな。今は補助金も減って、補助金だけじゃ生き残れないんよ。
②障害者の低い給料という課題
◇障害者の給料をどうやって増やすのか?
➡障害年金を受け取れても、収入はかなり低い
障害者の平均給与(おさらい)
◇A型事業所(雇用契約あり)
月給平均 83,551円(令和4年度)
◇B型事業所(雇用契約なし)
月給平均 17,031円(令和4年度)
※条件が合わんかったら、障害者の転職っていう選択肢もあるんやね。
③共生社会・インクルーシブ(みんないっしょ)に向けた課題

歴史的に障害者と健常者を分ける分離教育を進めて日本やからこそ、「みんないっしょ」には敏感なんよね。
◇分離教育を脱却し共生社会・インクルーシブ(みんな一緒)をどう進めるのか?
➡歴史的に分離教育を進めてきた日本をどうするか?
今回の話を「障害者の課題を考えるきっかけ」にするべき。

今回のニュースを知って、「批判されてるから悪いんや」ではなく、障害者雇用の課題を考えるきっかけにすべきやと思う。事業所をやめさせるのは簡単やけど…

障害者雇用の課題はそれだけじゃ解決しないもんね。

うん。障害者雇用の盛りだくさんの課題を認めて、「これからどうしていく?」って話し合っていくことが大事やと思うねん。


障害者雇用代行ビジネスの事業所の数がどんどん増えてってるみたいやね。
参考記事・URL
①北陸中日新聞(2023年1月10日の1面)
②障害者雇用率を段階的に引き上げ、2026年度中に2.7%へ







コメント