障害者雇用代行ビジネスとは?【メリットと批判されている理由】

このブログでは『特別支援教育』に関する情報をわかりやすく解説します。10年以上の教員経験を踏まえて、実践に役立つことを心がけています。

はてな君
はてな君

最近聞く、障害者の雇用代行ビジネスって何なん?
しかも、批判されてるみたいなんやけど…

まなぶ君
まなぶ君

今回は、障害者雇用代行ビジネスの概要批判されている理由について整理しよか。

こんな方に読んでほしい
●障害者雇用代行ビジネスの内容を知りたい。
●批判されている理由を知りたい。
●障害者雇用代行ビジネスに就職させても大丈夫かが気になっている。

今回の記事を理解すると、障害者雇用代行ビジネスについて自分の頭で考えられるようになります

まなぶ君
まなぶ君

一緒に勉強しよう!

▼この記事の動画もあります▼

▼今回の内容を1枚にするとこんな感じ▼

※高画質な画像はX(旧ツイッター)でアップしています。https://x.com/manabu_syogai/status/1835850868702466212

障害者雇用代行ビジネスとは何か?

障害者雇用代行ビジネスの全体像
はてな君
はてな君

これだけ見てもわからん…。
障害者雇用代行ビジネスって何?

まなぶ君
まなぶ君

まずは登場人物を確認して、それぞれの関係性を見ていこか。

▼登場人物は次の3者です▼

障害者雇用代行ビジネス事業所は「貸」農園を管理・運営

この事業所は、貸農園を管理・運営している。
➡この農園で障害者が野菜を栽培・収穫する。

「農園で障害者が働く」だけなら、他の福祉事業所にもよくある。

まなぶ君
まなぶ君

障害者雇用代行ビジネスでは、
貸農園っていうのがミソやねんな。

はてな君
はてな君

貸農園?
どういうこと?

まなぶ君
まなぶ君

貸農園やから誰かに貸すわけやろ?
それを貸す相手が障害者を雇用したい企業(A・B・C社)やねん。

代行ビジネス事業所と企業(A・B・C社)の関係

代行ビジネス事業所は
別の企業(A・B・C社)に
農園で働く障害者を紹介する。

企業(A・B・C社)は
代行ビジネス事業所に
紹介料・農園利用料を支払う

障害者雇用代行ビジネスを理解するポイント
◎代行ビジネス事業所は貸農園を運営している。
◎障害者はこの貸農園で働いている。
◎企業が障害者を雇用している(雇用契約を結ぶ)。
➡企業の社員(障害者)が貸農園で働いているというかたち。
◎企業は代行ビジネス事業所にお金(障害者紹介料・農園利用料)を支払う。

まなぶ君
まなぶ君

このポイントを踏まえて全体像を見てみると
イメージができるんちゃんかな。

まなぶ君
まなぶ君

障害者を雇用したい企業(A・B・C社)はお金を払うだけで、

代行ビジネス事業所が障害者雇用から働くまでを面倒みてくれるんよね。

障害者を雇用する理由【法定雇用率】

はてな君
はてな君

でも、企業(A・B・C社)は、お金を払ってるだけよね?
なんで企業は代行ビジネス事業所にお金を払ってまで企業は障害者を雇おうとしてるん?

まなぶ君
まなぶ君

雇いたかったら自分の会社で雇えばいいのに不思議やろ?
ここには、法定雇用率っていうのが関係してくるねん。

増加し続ける法定雇用率

法定雇用率とは…
企業は一定割合以上の障害者を雇わなければならないと法律で決まっている。

1987年:全従業員に対して障害者を1.5%雇わなければいけない。
2022年2.3%雇わなければいけない。
2026年度までに、2.7%まで段階的に引き上げていく。

法定雇用率を達成しないとどうなる?

法定雇用率を達成しないと
①障害者の不足1人につき、月額5万円支払う(納付金として)。
 ➡反対に、障害者の超過1人につき、月額2万7千円もらえる。
行政指導の対象となる。
 ➡改善しなければ企業名が公表される。
 △官公庁の入札で不利になる。△企業のイメージダウンにつながる。

まなぶ君
まなぶ君

企業(A・B・C社)は、お金を払ってでも法定雇用率を達成したいんよね

障害者雇用代行ビジネスが増えている理由(企業・代行ビジネス事業所・障害者のメリット)

まなぶ君
まなぶ君

次は障害者雇用代行ビジネスが増えてる理由を深掘りしよう!
企業・代行ビジネス事業所・障害者のメリットについてまとめたわ。

企業(A・B・C社)のメリット

法定雇用率を達成できる
 給付金(障害者の不足1人につき、月額5万円)を払わなくてよい。
 イメージアップにつながる。
➡会社のダイバーシティ(多様性)をアピールできる。

障害者に見合った仕事を準備しなくてよい
 自分の会社で雇うと、特別な仕事をわざわざ準備する必要がある。

はてな君
はてな君

雇った障害者にどんな仕事を準備すればいいのか相談できるところはあるの?

まなぶ君
まなぶ君

国・自治体・特別支援学校など実はいろいろあるで。でも、企業にはかなりの負担なんよね。

他の社員や障害者本人への配慮をしなくてもよい
 一緒に働くとトラブルが起こる可能性がある。
➡他の社員からの不満や悩み(サボりか障害かわからない。どこまで配慮すればいいの?)
 障害者本人への配慮にも気をつかう。
➡職場の人たちに障害をどこまで伝えるのか?

おいしい野菜がもらえる
 例えば、農園の新鮮な野菜を社員食堂で使うことができる。

まなぶ君
まなぶ君

最近は野菜の値段も高いから、新鮮でおいしい野菜がもらえると嬉しいよね。

代行ビジネス事業所のメリット

作物の出来は問われない
 市場に出さなければ規格(大きさ・重さ・長さ)は関係ない。

まなぶ君
まなぶ君

規格外の野菜ってけっこうあるからね

料の心配をしなくていい
 企業がお金(給料+紹介料+農園利用料)を払ってくれる。
➡能力を問わず、どんな障害者でも雇うことができる。

はてな君
はてな君

誰を採用しても良いってこと?

まなぶ君
まなぶ君

極端な話、「出勤さえしてくれればOK!」みたいなこと。
野菜を育てる力が問われるわけではないからね。

障害者のメリット

安定した給料(月11~13万円程度)がもらえる
 障害者の平均給与と比べると高い給料が安定してもらえる。

障害者の平均給与
A型事業所(雇用契約あり):月給平均 83,551円(令和4年度)
B型事業所(雇用契約なし):月給平均 17,031円(令和4年度)

成果を気にせず、自分のペースで仕事ができる
 ストレスの少ない安心した職場で働くことができる。

なぜ批判されているのか?(メリットはたくさんあるのに…)

はてな君
はてな君

みんなにメリットがあるから、批判する理由がよけいにわからんくなってきたわ…

まなぶ君
まなぶ君

じゃあ、ここでは障害者雇用代行ビジネスが批判されている理由について深掘りしてみよか。

日本・世界が目指す未来と違う

まなぶ君
まなぶ君

批判されてる大きな理由は、日本や世界の国が目指している未来と違うからなんよね。

◇日本や世界が目指す未来は、共生社会とインクルーシブがキーワード

共生社会とは…
◇障害の有無、男女、年齢などにかかわらず、お互いを大切に思える社会
◇さまざまな人が分け隔てなく暮らしていくことのできる社会

インクルーシブは、”みんな一緒”
 例えば、インクルーシブ教育は「障害の有無にかかわらず、みんな同じ教室で学ぶ」ことを目指した教育。

◇国際人権条約の『障害者権利条約』では、「障害を理由とするあらゆる区別は差別」だとしている。

まなぶ君
まなぶ君

障害者も健常者も区別せず、みんな一緒(インクルーシブ)に働こうを目指してるねん

日本の障害者施策に対する国連からの批判

日本では歴史的に、障害のある人とない人を分ける分離教育が進められてきた

◇日本の障害者施策の経緯(文科省HP「日本の障害者施策の経緯」より)
●戦前:家族が障害者を保護する(➡社会や国は障害者の面倒を見ない)
●戦後:障害児には特別な教育の機会(特殊教育)が与えられる。
➡特殊教育が養護学校、そして現在の特別支援学校へとつながっていく。

まなぶ君
まなぶ君

特別な教育をするために、日本では障害者と健常者が分けて教育されてきたんよ(分離教育)。
この分離教育が国連からずっと批判されてるんよな。

「分離」につながるから障害者雇用代行ビジネスは批判されている

はてな君
はてな君

そろそろ批判されてる理由をまとめてちょんまげ。

まなぶ君
まなぶ君

日本や世界が目指す未来【共生社会・インクルーシブ】と違うからやで。だって、会社が雇用してるにも関わらず、働く場を完全に分けてしまっているもんね。

はてな君
はてな君

みんな一緒に働いてほしいのに、このビジネスでは障害者と健常者が別々に働いてるんやね。

まなぶ君
まなぶ君

補足やけど、そもそも「障害者ビジネス」とかいうときの「ビジネス」っていう言葉は批判的な意味合いが含まれてるねん。

はてな君
はてな君

「障害者雇用代行ビジネス」っていう呼び方自体が「悪いことしてる」っていう印象を持たせやすくさせてるってこと?

まなぶ君
まなぶ君

だから関わる人は言葉に惑わされずに、中立の立場で物事を捉えるのが大事やね。

はてな君
はてな君

今回の登場人物で「○○が悪い!」と決めつけず、冷静に話し合っていければいいね。

障害者の雇用に関する多くの課題

まなぶ君
まなぶ君

障害者雇用代行ビジネスは、障害者雇用に関する問題を浮き彫りにしてるんよ。

①受け入れる側の課題

企業の課題
 法定雇用率が上がり、障害者を雇わなければならない。
➡かなりの負担感(仕事の切り出し、配慮)をどうするのか?

障害者を雇う福祉事業所の課題
 利益をあげるためにどうすればいいのか?

まなぶ君
まなぶ君

昔は補助金だけでほそぼそとやっていけたんやけどな。今は補助金も減って、補助金だけじゃ生き残れないんよ。

②障害者の低い給料という課題

◇障害者の給料をどうやって増やすのか?
➡障害者年金を受け取れても、収入はかなり低い。

障害者の平均給与
 A型事業所(雇用契約あり):月給平均 83,551円(令和4年度)
 B型事業所(雇用契約なし):月給平均 17,031円(令和4年度)

※状態に合わせて、障害者の転職っていう選択肢もあるんやね。

③共生社会・インクルーシブ(みんないっしょ)に向けた課題

分離教育脱却し共生社会・インクルーシブ(みんな一緒)をどう進めるのか?
➡歴史的に分離教育を進めてきた日本をどうするか?

今回の話を「障害者の課題を考えるきっかけ」にするべき。

まなぶ君
まなぶ君

今回のニュースを知って、「批判されてるから悪いんや」ではなく、障害者雇用の課題を考えるきっかけにすべきやと思う。事業所をやめさせるのは簡単やけど…

はてな君
はてな君

障害者雇用の課題はそれだけじゃ解決しないもんね。

まなぶ君
まなぶ君

うん。障害者雇用の盛りだくさんの課題を認めて、「これからどうしていく?」って話し合っていくことが大事やと思うねん。

参考記事・URL

①北陸中日新聞(2023年1月10日の1面)
障害者雇用率を段階的に引き上げ、2026年度中に2.7%

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